夏輝(なつき)とお母(かあ)の毎日のこと・・・山の怪その1

 お母(かあ)は最近、ふと思い出したことがあるんだって。それは小さい頃に両親や近所の大人からよく聞いた不思議で怖いような話。例えば、近所の酔っぱらいが朝になっても帰らなくて心配してみんなで探したら、裸で肥溜めに入っていた…とか、大雪の日に酔った父ちゃんが、歩いて5分くらいの自宅に向かって帰っているはずなのに、1時間歩いても家にたどり着かなくて…ハッ(゜ロ゜)と気づいたら隣の部落だった。吹雪の中、死を覚悟して夢中で引き返して我が家の明かりが見えた時は嬉しくて涙しながら「帰ったぞ~」って何度も叫んだとか…高熱を出した兄が「カキの木に誰かが立ってこっちを覗いてる!!」とか、お昼に出したうどんを見て「うどんが真っ赤だ~怖いよ~~」となされていた…とか。こういう出来事を昔の人は「狐につままれたとか、狐につかれた」って言って怖れていたみたいだよ。
 それって単に、酔いつぶれたり高熱のせいで悪い夢をみていただけだとも思うけど…酔いつぶれたり高熱でもないお母(かあ)も、不可思議な体験をしているんだって。
 気になったお母(かあ)はネットで検索して、田中康弘著「山怪(山人が語る不思議な話)」という本に行き着いて、今読んでいる最中なんだ。その本には古今東西、お母(かあ)が聞いたり体験したのと同じような話が沢山詰まっているんだってさ。著者が「日本の山にはまったくもってはっきりとはしないが、何かがいる。誰もが存在を認めているが、それが何かは誰にも分からない。敢えてその名を問われれば、山怪と答えるしかない」と言っているように、お母(かあ)も何かはいるのかも…って頭のどこかでは思っているんだってさ。
 今日の朝の秋保大滝は、朝日と青空に照らされてとっても綺麗に見えたんだって。少しづつ氷も見え始めたんだよ。

f:id:koromokku:20160120210257j:plain